やあ~!
くまままです
介護される側は、我慢していること、遠慮していること、申し訳ない気持ちがそれなりにあるものです
でも、サポートする側だって、心の葛藤がたくさんある
人間関係は時に難しく、こじれているように見えることがあります
いつも良好というわけにはいきません
でも、そんな時こそ
お互いの気持ちを「聴きあえたら」・・・
そう思うのです
どちらかが良いとか悪いとか、そんなことを超えた世界がそこにはあります
関係性が近かったり、想いが強いゆえに、上手く聴きあえないこともしばしば
入院中の くままま と イモコにも、こんな経験がありました
今日は、ヒトとヒトの心のお話です
これは、わたしの過去の体験です
ちょっとした物語と思って読んでいただければ幸いです
サポートする側の気持ち
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自分で歩けるようになってきたころの、ある日の病室
わたしはトイレから帰り、ルーティンである屈伸運動をしてベッドに横になった
もうすぐ消灯の時間だ
今日も一日頑張った
リハビリもハードになってきて体もだいぶ疲れている
横になりながら、わたしはイモコに目をやった
付き添いをしてくれているイモコは、ベッドの隣にあるソファを倒し、自分が横になれるスペースを作っていた
大概いつも何かおしゃべりをして笑顔のイモコが 今日は浮かない顔をしている
黙って黙々と手を動かしている
少しピリッとした山椒のような空気がイモコから漂ってくる
小さなころの趣味は、妹の観察をすることと言っても過言ではないほど、近くでイモコを見てきた わたしは すぐさま察した
これは何かあるな・・・
「イモコ、何かあった?」
わたしは、できるだけさりげなく聞いた
「・・・何もない」
少し手を止めた後、イモコはそう言ってまた眠る支度を再開した
いやいやいやいや
その反応は「何もない」わけがなかろう
わたしが何年あなたの姉をやっているとお思いで?
瞬時にわたしの頭がはじき出した過去のデータから分析すると、こういう場合は だいたい、何かに怒っている
そして、この部屋には わたしとイモコしかいない
ということは・・・
わたし、何かした???
今日一日を思い返してみても、これといって思い当たる節がない・・・
でも、過去にも自分が無意識にしたことや、良かれと思ってしたことが、イモコにとっては大迷惑ということも多々あった
やっぱり何かやらかしたのか???
しかし、悲しいかな、今は「してあげる」どころか、サポートしてもらっている立場である自分には、やはり何も思いつかなかった・・・
「わたしには、なにかあるように見えるのだけど・・・今の気持ちを話してくれない?」
わたしは、イモコの返事を待った
イモコは 下を向いたまま黙っている
沈黙が病室を駆け巡る
沈黙を破ったのは、イモコの開いた口だった
「姉ちゃんが頑張っているのに、自分がストレスを与えたらいけないと思って 我慢していた
自分も生理痛でしんどいし、気持ちも張りつめて頑張っている
しんどいと思う気持ちを 姉ちゃんに言うなんて ダメだと我慢していた」
イモコは、今の自分のモヤモヤを吐露した
よほど張りつめていたのだろう
イモコの目には光るものがあった
「聴く」ということ
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そうだったのか・・・
気付いてやれなかった・・・
イモコは昔から生理痛が酷い
その様子を側で見てきたわたしには、どれだけ彼女が日中我慢して、わたしのサポートやリハビリに付き添ってくれたのか 優に想像がついた
申し訳ない気持ちが 不意にわたしを襲う
無理させて、ごめん・・・
自分がこんな状態になってしまったから、イモコに迷惑をかけている・・・
そんな自責の念が湧くのも確かだが、ここで謝るのは絶対違う
自分の薄っぺらい罪悪感なんて使っている場合ではない
そんなことをしたら、イモコをまた悩ませてしまう
謝ってもらいたいわけでは絶対ない
そんなことをしたら、イモコの話が、くまままの話になってしまう
つまり、イモコの話を取ってしまう
それは、イモコの気持ちをちゃんと聴けていないことになる
あんたの話なんてしていないよ!と自分に突っ込む
話してくれた、イモコのありのままの気持ち
そこには、くままま の気持ちは1ミリたりとも入れてはいけない
正直に語ってくれた イモコのこの気持ちを、ただ真っ直ぐに受け止めよう
そうは思っても、自分の気持ちと、相手の気持ちを切り離すのは かなり難しい
ましてや、姉妹という近い存在では なにかと「一緒」という概念が無意識に作られるような気がする
親子、夫婦、友人、どんな関係性でもそうかもしれない
目の前のヒトの そのままの気持ち
その話に自分が登場人物として関わっていたら尚更・・・
自分の中にそんな思いが押しては返すのを感じながら、わたしはイモコから受け取った気持ちを表した
「生理痛でしんどかったんだね・・・
わたしにストレスを与えないようにと我慢して頑張ってたんだね・・・」
「サポートしてくれてありがとう・・・
イモコがそのままで、無理せずに
居てくれるだけで大きな助けになっている
どうかゆっくり休んでね・・・」
わたしはそう伝えるだけで、精一杯だった
関係のない自分の気持ちの話ならいくらでも出てくるが、イモコの気持ちを聴いたうえで出てくる言葉は それほど多くはなかった
介護される側が望むこと
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消灯になった
先ほどから目を閉じたり、開けたりを繰り返している
イモコはもう眠っただろうか・・・
ソファベッドには毛布を被って小さく丸まったイモコの背中だけが見える
暗くなった病室で、わたしはまだ考えている
体調がすぐれない状況で、わたしの応援もサポートもしたいとなると、そりゃ頑張るし、我慢をするのは当たり前だ
サポートが必要な自分・・・
サポートする側がしんどい状態が現在
休んでほしい・・・
周りの負担を少しでも減らしたい・・・
自分がもっと自分のことを出来るようになったらいい
それには、頑張るしかない・・・
それは、今の自分の気持ち
イモコが自分の気持ちを正直に話してくれたことは嬉しかった
我慢していることを知れてよかった
体がしんどい、その状態でもサポートすることを選んでくれている事実
そこには心から感謝したい
そして、それがやりたいことだと決めて、側でいてくれるイモコの気持ちも尊重したい
だからこそ、
風通しのよい関係性 でありたい
それは、そんな気持ちを聴き合うことから生まれるのかもしれない
我慢もできるうちはいい
でも、無理しすぎるのは、サポートする側にとっても、サポートを受ける側にとっても メリットがない
自分の中の違和感を自分で感じとる力
それを表に出せる関係性
そういう中で過ごしたい
相手の話を、丁寧に聴きたい
自分の気持ちと混同せずに、自分を責めて自分の物語に浸らずに・・・
お互いのありのままの気持ちを丁寧に聴き合えたら、どんな状況であっても少し風が通って、心健やかにいられるのではないかな・・・
いつもそうできたらいいけれど、そんなに簡単ではないことも知っている・・・
自分も我慢が得意だし、自分を責めることも簡単にできてしまうからだ・・・
だからこそ、いつも自分に正直でありたい
我慢することすら、自分が選んだことだと言える自分でいたい
少なくとも、自分はそうありたい・・・
大事な人たちと一緒に過ごしたいから・・・
イモコにわたしが望むことは何だろう・・・
出てきたのはこんな言葉たちだった
「自然体で ありのままの イモコでいてください
その存在だけで十分 わたしには薬だし 癒やしです
それ以上の事は 何も望んでいません
どうぞそのままで 笑っていてください
わたしのことを 想ってくれて ありがとうございます」
明日 目が覚めたら、きちんと伝えよう
薄暗い病室
一定の呼吸でゆっくり上下に動くイモコの背中をしばらく見つめて、わたしは目を閉じた
ある日の病室のはなし
おわり
最後まで読んでくれてありがとう
今日も素敵な一日を
追記:わたしが脱髄疾患(clinically isolated syndrome:CIS)と診断がつき、病気のことについてネットで検索しました
脱髄疾患の中でも、難病指定されている 多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMOSD)の情報はあるのですが、第1回目の脱髄であるCISは人数が少ないこともあるのか、その後MSやNMOSDへと移行する可能性があるからなのか、あまり情報がありませんでした
脱髄は脳や神経の発生する場所によって、症状も様々だと思いますので、必ずしも わたしの体験と同じということは少ないかもしれません
それでも、病気と向き合う中、体や心、日常で感じることは似たこともあるのではないかと思います
もし同じような状況下にある方や、周囲で支える立場にある方々、病気の情報が欲しい方に この記事たちが何かのお役に立つことがあるなら こんなに嬉しいことはありません
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